私は独立して設計事務所を営む前は地元の小さな工務店に勤務した後、分譲住宅をしている会社に勤めていました。
土地を仕入れて建築条件付きの住宅を建てる会社です。
建売住宅もしていました。
その会社で設計担当をしていた頃の話しです。
入社する前は以前に勤めていた工務店よりも大きい会社で期待していたのですが、実際の実務は注文住宅なのに外装・内装材・設備も決まった物しか使用できない決まりがありました。
賃貸に使われる安いビニールクロスやフローリングやタイルで色が数色ある中から選んでもらうだけです。
使用する材料だけでなく、外観形状まで制約がありました。
お客様と打ち合わせして間取りを決めて平面図と立面図と配置図の3枚を書くだけで見積もりは坪いくらなのてすぐ出ます。
間取りがお客様によって少し違うだけなので、どの住宅も同じように見えます。
それでも土地さえあれば売れる時代で仕事を早くこなさないと会社から能力の無い者と思われる状態でした。
お客様はゆっくりと考える時間も無く契約して工事着工となる流れです。
私はお客様の夢や細かな要望を汲み取って設計するのが注文住宅なのに、これでは設計とはとても言えず仕事をする意味が無いと感じその会社を辞めたのです。
景気が後退すると同時にその会社は倒産しました。
CMで有名な住宅メーカーは名前では安心感がありますが、モデルハウスや綺麗なパンフレットやホームページや営業社員の給料などの莫大な経費がかかり、その経費は住宅価格に含まれています。
規格プランや標準仕様を定めて手間を省く方法は効率がいいですが、そこで働く建築士は私が以前に勤めていた頃の様に会社が決めた枠の中でしか動けない自分に歯がゆい思いをしているかもしれません。
小さな設計事務所は大手の様に名前では安心感がありませんが、標準仕様もなければオプションもありません。
全てあなたの希望通りの家ができます。
施工する工務店は大手の様に莫大な経費がかかりません。
設計と施工を分離する事で設計者はお客様の立場で工事が適切に行われているか検査し施工者に指示する事ができます。
デメリットは設計や見積もりに住宅メーカーよりも日数がかかる事です。
一生に一度かもしれない新築住宅なのですから、バタバタと急がずに余裕を持って家づくりをされてはいかがでしょうか。