
岡山県美作市のS様邸の台所のリフォーム前の様子です。
壁や天井は一度新建材を張ってリフォームされていますが隙間風が入る状態でした。
土間の台所にコンクリートの流し台で冬には雪がいっぱい積もる地域でとっても寒く、主婦にとって台所作業は大変だった事と思います。
高齢のご夫婦二人だけの住まいで、奥様は足の具合が悪く土間から床の上り降りもしにくい状況でした。
昔建っていた建物を移築されてから70年程経つ茅葺屋根の古民家です。

土間の台所でしたが床を新たに上げて茶の間とキッチンの段差を無くしました。
バリアフリー設計です。
床には断熱材を充填する他、断熱サッシや断熱構造の壁としました。
給湯器を新たに設置したのでキッチンだけでなくお風呂や洗面もお湯が使える様になりました。
清潔感のあるホワイトのL型キッチンは収納量も多く、調理作業もはかどります。
新建材のべニアで覆われていた梁が見えるキッチンは重厚感もありオシャレなインテリアになりました。

リノベーション前の茶の間の様子です。
土間の台所の横に位置します。
和室の部屋は食事するところでもあり、こたつでテレビを見たりするリビングでもあります。
こちらも一度プリントべニアなどを張ってリフォームされていますが、木製の建具からは隙間風の入る寒い部屋でした。
床組みが不朽してふわふわしている状態です。

リノベーション後のリビングの様子です。
キッチンとリビングを一部屋にしてLDKスタイルにしました。
腐っていた床組みを新たにリフォームして、床・壁・サッシ共断熱性能の良い物にしたので、隙間風も無く部屋が広くなっても暖かいです。
既存のまだ使える木製建具はそのまま活かしています。
ぺニアで覆われていた天井を撤去して天井裏に隠れていた太い梁を活かしたLDKは本来の古民家の良さを取り戻した設計です。

岡山県美作市のS様からリフォームの依頼を受けて、私が既存の天井や壁を撤去して古い梁や壁を見せる建物にすると提案した時にお施主様から
「せっかく一度リフォームして天井や壁を新建材で張っているのにそれを昔に戻すのか、冬寒いし、暗いし、そんなことやめてくれ」、と反対されたものです。
しかし私は日本古来の伝統工法で大工さんが梁を汗をかきながら、一つ一つ手作業で削った跡のある梁を真っ暗な天井裏でクモの巣とホコリにまみれながら、ぼんやりと見たときにこの建物をよみがえらせてやりたく思いました。
又、高齢のご夫婦にとってこの家は人生を共した思い出が刻まれた大切な家であると思いました。
設計は既存の天井や壁を剥がさないとわからない部分が大半で
又、梁の高さが低く、バリアフリーの実現が不可能かと試行錯誤しましたが、施工段階でその都度対処検討して完成を迎えることができました。
単なる修繕するリフォームでは無く、リノベーションであり、古民家再生でもあります。
大工さんや左官屋さんなどの職人さんの協力で、古民家は今再び輝き始めました。
一部ご近所の方に完成した古民家を見て頂きましたが、皆さん自分の家の様に
「これはいいわ、古い梁が見えているのが特別いいわ、きれいやなぁ、依然と全然違うなぁ、使い勝手がいいわ」
などと言って頂き嬉しく思いました。
静かに一人この家の中にいると長い年月を生きてきたこの家から甦った鼓動が聞こえて来るのを感じました。
新庄一級綜合建築設計は新築の建物だけでなく、古民家のリフォームやリノベーションも手掛けていますので
小規模な物でも遠慮なくご相談下さい。